齋藤研の油絵 The oil painting by Ken Saitoh
齋藤研の油彩画
アレクサンドラのスペース
the space of Alexandra
1983年 独立展出品作品
埼玉県立近代美術館蔵
F200 (194.0x259.0cm) oil painting

 

アレクサンドラのスペース (油彩 200号 1983年作品)    文:齋藤 研

女子美術大の絵画教室(現 美術コース絵画)の専任講師にしてもらった時はうれしかった。私は45歳、これであすからの食べることを心配せずに絵が描けると思った。
その頃の作品がこの「アレクサンドラのスペース」である。モデルのアレクサンドラは23歳のパリ娘で東京でも個展を開いた造形作家志望。夏休みに、紹介する人があってアレクサンドラが、私たちグループのデッサン会にモデルとして現れた。日本での滞在と活動資金稼ぎのためのモデル業であった。
私はその年の独立展出品のために、アレクサンドラをモデルとする作品を制作する計画を立てて、仕事場にきてもらったのだが、美しく、デリケートな神経の持ち主であった。暑いのでアイスキャンデーを買ってきたり、サービスにこれ努めた。レコード機から選びだしたフォーレだとかデュバルクだとかフランスの歌曲は特にウケた。
思いがけずに、故国の魂を異国の地で聴く。おそらく事が思いどうりに進まないであろうアレクサンドラの日本での現実、そして、両親、兄弟との過ぎ去った日々が鮮やかにコントラストしたはずである。
わたは、彼女の緊張と不安を通して、ひと時の心の安らぎの為の空間を描こうと思った。独立展の初日に彼氏と一緒に絵の前に現れたアレクサンドラが「オメデトウ」と言ったのが昨日のことのように思われる。
あれから20年、元気にしていればアレクサンドラは43歳。今はどのような活動をしているのか、それとも忙しく、幸せなオッカサンか。